
「どうして世界のトッププレイヤーたちはストレードバレルを使うのか?」
きっかけはすべてこの疑問からでした。
しかしその疑問に答えてくれる人はどこにもいないし、どの本やサイトにも載っていませんでした。
結局自分で探すしかなかった、、、
長いことその謎は解けないままでしたが、今年PDCプレイヤーが来日。
彼らのイベントで世界トップのダーツを生で見て、肌で感じ、
スローを撮影させてもらい、彼らのプレイのコーラーまでやらせていただきました。
誰よりも間近でその技術に触れたことで多くの謎を解決するためのヒントが見えてきました。

自分のスティールダーツ考察論は【自分から見た彼らのダーツと自分が今まで見てきたダーツの違い】について研究し考えたものです。
正解を書いているわけでもなければ、こうした方がいいと書いてるわけでもありません。
無責任ではありますが自分が見たありのままを書いています、自分勝手な考えであることをお忘れなく。
すでにここまで彼らの技術考察を複数回にわけて書いてきました。
最終回はこれまでの話をまとめつつ「だからストレートバレルなんです」
というゴール目指して進めていきたいと思います。
最後までお付き合いください。

世界のスティールダーツ考察シリーズ 最終回。
世界のトッププレイヤー達はなぜストレートバレルを好むのか?という謎の解明です。
不思議に思ったことはありませんか?
PDC・BDO選手の8〜9割がストレートバレルを使用しています。
日本ダーツ界は8〜9割がストレート以外のバレルです。
なぜ世界のダーツプレイヤーはストレートを選択するのか?
その話しは「世界と日本の考え方、観点の違い」というところに焦点を当てながら説明していくことにします。
日本がダメで世界は正しいということではありません。
あくまでスティール視点でみた日本と世界の違いです、どっちが正解とかそういうものじゃありません。
※主に「世界」という表現はPDC、BDOを指しています
まず最初にお話しなければいけないのが矢の飛びに関してです。
手から離れまっすぐターゲットに向かってブレることなく吸い込まれるように飛ぶ美しい放物線。
日本で一般的に綺麗とされる、憧れの飛びはこういうものだと思います。
日本のトッププレイヤーの多くがその飛びを実現していらっしゃいます。
海外のプレイヤーに比べてダーツが暴れず、矢先が放物線に沿ってターゲットめがけて綺麗に飛びます。
なぜ海外は矢先を上げるのに、国内のトッププレイヤーは矢先を上げようとしないのでしょう。
(もちろん海外にも日本人のような飛びをさせている人もいるでしょうし、国内でも矢先を上げてなげる人はいます)
これはソフトダーツ主流の日本ではシュート力優先、入れ重視だからなんじゃないかと考えてます。
そしてこの飛びは海外の矢先を上げる飛びに比べると「失速しはじめると推進力が急激に落ちる」という特徴があります。
手から離れて一番高い位置を通過、そこからターゲットに向かうところで矢速を失うといっきに垂れてしまう特性があります。

なのでターゲットにシュートする率を安定させるためには矢速を維持した状態で的に届く必要があります。
この芯抜きでリリースして矢先が放物線からずれない飛びで垂れないようにする一番効果的な方法は、、
「矢速をあげる」という方法になります。
しかし矢速をあげて、タイミングを合わせ、リリースミスをなくし、3本投げるというのは高い技術と集中力が必要です。
国内トッププレイヤーの矢速や腕の振りが海外のスティールプレイヤーに比べて早い理由はここだと思います。
垂れる前にターゲットを捉える、そのために腕を早くふり矢速をあげている。
世界のトッププレイヤーだってすごい矢速早いんじゃないかと思う方がいらっしゃるかもしれません。
しかし世界トップ(PDCトップ)のプレイヤー達はびっくりするぐらい矢速を出そうとしません。
腕の振りも比較的ゆっくりです、ゆっくりっていうか普通のスピード。
野球の球を投げるっていうよりは、ゴミ箱に紙くずを投げ入れる、、そんな程度の腕の振りです。
早く見えることあるかもしれませんが、日本人ほど矢のスピードを上げようとしてないんです。
もちろん例外はいますけどね
矢速があるように見えるのは後々説明しますが、矢のリリースの仕方、ターゲットに刺さるまでの矢の動きが違うためです。
実際に自分が普段店で見ていても、ほとんどハードダーツはやらないというソフトのトッププレイヤーには矢速が早い人が多いです。
それに比べてソフトはあまりやらないという人はみんな矢速をそこまで上げないでスローしています。
どんな競技や動きでもそうですが、ゆっくりやるのと、はやくやるのでは
早く動かそうとすればするほどリスキーでミスが発生しやすく、そして安定しないということは理解できるかと思います。
ダーツに限らずです。
そしてこの芯抜き(芯出し)をして失速する前にターゲットを捉えるのを補ってくれるのが「力が伝わりやすいバレル」です。
日本ではストレートバレルよりもトルピード型(砲弾型)や樽型など力が伝わりやすい形状が一般的になっています。
ソフトダーツだとストレートバレル使っている人って全体の1〜2割ぐらいでしょうか。
いずれにせよ、しっかりグリップ出来て、グッと力を乗せることができるバレルが人気です。
よくオンラインショップのインプレッションでも「このバレルは力が伝わりやくてよく飛ぶバレルです」っていう紹介をよく目にします。
やはり力の伝えやすい形状は国内では人気があります。
実はここなんですね。
ここが日本と世界のバレルに対する考え方の大きな違いです。
日本 = 力が伝わるバレル = 良し
世界 = 力が伝わるバレル = ダメ
力が伝わりやすいバレルなんて良さそうな感じがしますが、
逆を返して考えればそれは無駄な力、余計な力、失敗、これらまで伝わってしまうということです。
そのようなバレルでは毎回同じように投げるのが非常に難しくシビアになってしまう。
世界のスティールダーツプレイヤー達はそう考えているんですね。

全体アベレージで考えていかに毎回同じように投げれるか、そこを重要視しているんです。
シンプルにグリップして、シンプルに抜く。
どちらかというと力が伝わりすぎない、毎回比較的同じリリースが出来て、どこを持っても同じようなストレートバレルの方がいいんじゃね?っていう選択。
毎回しっかり伝えることに集中して、リリースやタイミングをミスしないように投げるよりは
毎回勝手に飛んでちゃって、リリースやタイミングなんてあまり気にしなくていい技術を身につけようという考え。
日本のトッププレイヤーに比べて世界のトッププレイヤーのリリースタイミングが早いことも、このへんの意識が関係しているようです。
シュート力とスロー再現力の話も関わってくる部分です。
スタッキングという技術に関してもバレルの形状は影響します。
スタッキングは先に刺さっている矢をうまく使って(ぶつけたり、くっつけたり)次に投げる矢を目標に運び込むテクニックです。
これもストレートバレルの方がずっと有利なのです。
以前に紹介した「くっつきスタッキング」というスティールならではの現象。
飛んで来たダーツの先端が刺さっているダーツの一部に接触するとそのまま磁石のようにくっついた状態になりダーツの表面をくっつきながら滑りように導かれて刺さるという不思議な現象です。
これによりポイントとポイントがほぼ同じ場所にささるようなグルピーングが可能になります。
まっすぐな形状のバレルとふくらみがある形状のバレルではどっちがこのくっつきスタッキングで有効かは想像できるかと思います。
さらに、このくっつきスタッキングのパワーをさらに強くしてくれるのがバレルに入っている刻みです。
刻みが無い方が綺麗に滑ってくっつきやすいんじゃないかと思いがちですが、実は溝にポイントがひっかかることでくっつきスタッキングが起こりやすくなるのです。
投げるためのリングカットではなく、グルーピング(スタッキング)を重視してのリングカットなんです。
だから海外バレルメーカーのダーツは前から後ろまで溝がしっかり入っているものが多いんですね。
くっつき効果をあげるためのものなんです。

国内のバレルにはバレルの先端に縦溝が入っているものがありますが、あれではくっつきスタックは発生しづらいのでスティールバレルとしてはオイシイところが無いカットということになります。
このような点を踏まえて日本と海外のバレルを比べると大きな違いがある事に気がつきます。
日本のバレル = ダーツを飛ばすための工夫が求められる
世界のバレル = 刺さっているダーツを活かすための工夫が求められる
この違いです、投げる前、投げる時を重要視するのか、投げた後、刺さった後を重要視しているのか。
バレルに必要としている性能に対する考えの違いは日本と世界でぜんぜん違うということがわかってきました。
シュート力重視の日本(ソフトダーツが主)
グルーピング力重視の世界(スティールダーツしかない)
こんな乱暴な分けかたしちゃうと細かい事ツッコまれそうですけど
わかりやすくするとこういうことだと思います。
もちろん細かいこといえば違う点もたくさんあるのは承知したうえですけど
バレルデザインひとつとっても求めている点が違うということが少しは理解していただけたんじゃないでしょうか。
スティールダーツはストレートバレルがいいってことを言いたいわけではありません。
世界のトッププレイヤーたちの多くがストレートバレルを選ぶ理由を書いています。
海外のプレイヤーには裏抜き(裏出し)で矢先をあげてリリースするプレイヤーが多いです。
投げたときにバレルがウィリーするようにリリースするタイプのことです。
表抜きで矢先をあげるひとも結構いますが、実際裏抜きする人が多数です。
注目すべき点は「矢先を上げる」という点です。

世界のトッププレイヤーのスロー映像をみるとほとんどのプレイヤーがリリース後に矢先を上に向けてます。
なぜ矢先をあげるのか。
これは芯抜きの話をした際に説明したデメリットに関係してきます。
芯抜きが持つ弱点=失速しやすい
矢先をあげることでこの失速を最小限にできるのです。
(ソフトではそこまで有効ではないかもしれません)
矢先を上げてリリースすることで最高到達点(一番高いところ)からターゲットに向かって落下する際に、上を向いた矢先がお辞儀するように落下運動することで推進力を損なうことなくターゲットに落ちてくるということです。
この矢先をあげる放物線は、くっつきスタッキングでも有効です。
というのも矢が失速後に接触するのと加速しながら接触するのではくっつき方に大きな違いで出てくるのです。
失速して接触した場合はくっつく力が弱く弾かれやすくなります。
なので推進力を得たままぶつけることがスタッキングには欠かせないのです。

放出から着地まで推進力が均等に発揮されやすいので、放物線も安定した半円を描くようになります。
そしてなによりこの飛ばし方は矢速がそんなに必要ありません。
ここ重要です、矢速がなくても安定して飛ぶんです。
矢を投げる際にスピードを落とせるということで再現性が高まりやすくなります。
これまたグルーピング力があがることにつながっていきます。
以上、ここまでずらずら書きましたがこういった一連の理由から
海外では主にストレートバレルが選ばれています。
どれもスティールダーツならではの理由です。
もしストレートにチャレンジしてみようと思った方へ。
どうせバレルをストレートに変えるならならセッティングはクラシカルにしてみてください。
いわゆる紙フライトってやつです。
世界のトッププレイヤーの多くがストレートであると同時に紙フライトです。
紙フライとの方がいいよ、ということじゃなくて試してみてなぜ彼らは紙なのか?を感じてもらいたいなと。
どうせバレル変えるならついでに1週間フライトも試してみて欲しいなと思います。
こういうこと書くと国内の成形フライト作ってるメーカーさんに睨まれそうですけどね。
やっぱりストレートバレルでクラシックなセッティングを世界は選んでいる理由はあると思うんです。
最後に。
日本人のダーツテクニック、主にシュート力は世界トップクラスだと思います。
そこは世界も恐れています。
かと言ってこのスタッキングなどのスティールテクニックを覚えれば、
スティールでも世界で勝てるのかっていう簡単な話でもありません。
ただ、世界が使っているこれらのスティールテクニックを知り、取り入れていくことで、
とてつもない日本ならでは強さが生まれる可能性は大きいと思います。
ジャパンウェイってやつですね。
日本人の器用さ、精神力の強さは世界で一番だと思います。
そんな期待をしつつソフダーツとスティールダーツで使う技術の違い、
世界と日本の違いを自分なりに書いてまいりました。
忘れて欲しくないのは、何が正しいのかではなく、
自分のダーツはどういうものなのかを知ってそれをどう生かすか。
クセを直すのではなく、クセを知ってそれを生かす。
その生かし方の参考となればというのが今回のスティールダーツ考察です。
これを読んで上手くなる人はいないかもしれないけれど、
ダーツのモチベーションがあがったり、
さらにダーツが楽しいものになってくれたら自分は嬉しいです。
ではでは。