「はじめに」
これまであまりアレンジには触れてきませんでしたが、ここらで自分が考えるアレンジというものを一度お話しておこうと思います。
読んだ人に新しい発見や参考にできる部分をみつけてもらって、それによって自信を持てるようになったり、アレンジの幅を広げるヒントになれば幸いです。
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「アレンジとは」
まずアレンジって何?って人もいるかもしれませんので簡単に説明。
ダーツでいうアレンジというのは01ゲームにおいて、最後にダブルアウトするために、自分の持ち点を2〜40点、もしくは50点に整えることを言います。

・58点残りで18シングル(S18)に入れて20ダブル(D20)にする
・95点残りでT19に入れて57点減らすことで残り38点にしてD19を狙う
・61点残りはアウターブル(SB 25点)に入れてD18残りにしたり、T15(45点)に入れて16点残りにしてD8狙いにしたり、T7(21点)に入れて40点残りにするというアレンジ
・10点残りでD5を狙わずにS2に入れて8点残りに変えてD4狙いにするのもアレンジ

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アレンジにも定石はあります、アレンジ表ってやつですね。
作ってる人やメーカーによっていくつかバリエーションがあります。
定石を覚えるのは大事です。
でも正直、暗記したからアレンジはオーケーというものではありません。
状況や、相手の点数、自分のレベルや調子、得意なところなどによって打ち方を工夫すること。
それがアレンジの大事なところであり、腕の見せ所です。

もちろんアレンジを知らなくても、アレンジを無視しても、スティールは楽しめます。
でもアレンジを知らないと、知っている人よりも損をする場面が多くなります。
アレンジを覚えて、アレンジを研究して、自分なりのアレンジで勝つことで、上達を感じることもできるでしょう。
アレンジなんてどうでもいいという方も、ぜひこの機会にアレンジの楽しさも知っていただきたいと思います。

「大局観、全体を見る」
アレンジは、何点でどこ打つ、ということだけでなく、最後のダブルを打つまでの「過程」が重要です。
その場面ごとに計算して考えて(点=場面)ではなく、投げる前に流れを決めておく(線=流れ)
大きな視点で考えることが大事です。

『アレンジは点ではなく線である』 という考えです。
その時々(点)ではなく、流れ(線)ということです。



上がりへの流れ=アレンジ
ということにおいて大切なのがパターンを体で覚えることです。
何点でどこを打つというアレンジ表を暗記するだけでなく、実際に何度も試して全体の流れをカタチで覚える。
九九と同じように、頭で計算しなくても自然と反応できるようになることが大切。
ソフトダーツなら画面に残り点が出ますが、スティールは取った点数から残り点の計算まですべて自分でしなくてはいけません。
いちいち頭で計算していたのでは、その状況ごとに対応しなくてはならず、リズムがなくなりシュート率も下がります。
ゆえに相手のスローを後ろで待っている間がとても重要です。
次の順番がくるまでにアレンジを考えて、流れをしっかりとイメージしてスローラインに立つ。
スティールダーツではとても大切なことです。

「乗換え案内に例えてみる」
アレンジって乗換え案内に似ているなとよく思います。
電車で出かけるとき、目的地までの経路をアプリなどで調べるかと思います。
最寄り駅から目的駅までの駅の経路検索。
何通りかの経路が出たりします。
運賃の安さ、到着の速さ、乗換えの少なさ、空いてる電車、、
これらを考えながらひとつを選びます。
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アレンジも同じです。
試合状況、相手の点数、自分のレベルや調子、残したいダブル、、
これらを想定して、打ち方(経路)を決めて最後のダブル(目的駅)を目指します。

手堅くいくこともあれば、上がり最短を目指す事もあるでしょう。
そして自分はしっかり20で削って40点以下の偶数まで持っていくという、乗換え案内で言えばのんびりでもいいから目的地に辿りつけばいいというチョイスでしょうか。
人それぞれ、状況に応じてっていうのがアレンジ。
乗換え案内と同じように、一番オススメの経路があるとしても、自分の好みや状況に合わせたものを選択していい。
目的は同じでも、そこへ行くまでの過程は人ぞれでいいと思います。
とはいえ、他の選択肢を試してみるということも大事です。
いつもの経路だけでなく、たまにはちょっと違う電車、違う駅で乗り換えてみる。
そこに思わぬ発見があったりするかもしれません。
ちょっと遠回りだけど、この駅で乗り換えた方が楽だな、とかね。
いろいろな目的地まで行く方法を何通りも覚えて、試して、それぞれのメリット、デメリットを知りることは、乗り換えもアレンジも同じです。

自分の得意不得意で経路がかわるということを例をあげて説明しましょう。
71点残りのアレンジ。
T17(51点取って20点残し) or T13(39点取って32点残し)たいていこのどちらかでしょうか。
D16が好きな人多いから、T13狙う人が多いかも知れません。
決まればかっこいいです。
でもトリプルに入るよりもシングルに外れることの方が多いと思います。
しかも下に垂れて6シングルに入ったりすることも多いんじゃないでしょうか。
もし13シングルに外れたら、次は18シングルに入れて最後D20(トップ)です。
このアレンジ、横ズレはするけど、高さは比較的安定してる人向けと言えます。
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代わってT17を狙った場合。
17トリプルに入ったらその高さのまま、右にあるD10狙いです。
17もD10も縦に長いので、縦ラインに自信がある人に向いてるかもしれません。
しかも、もし17トリプルを17シングルに外ずしても54点残りです。
54点って結構おいしい数字。
14シングル打ってトップ狙うのもありますが、手堅くいくなら残り2本はS18狙いが良いかもしれません。
18シングルに入れば、そのままD18です。
もし下の4シングルに垂れたとしても、50点残りになるのでD-BULLが狙えます。
このように保険が多いのでダブルまでたどり着ける確率が高いです。
こういうことを知っているのと、知らないのとでは大違いです。
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このようにアレンジがいくつかある数字では、それぞれ試してみて、メリットとデメリットを把握。
自分にはどちらがあっているのか、どういう状況でそれをチョイスするべきなのか、それを練習しながら身につけましょう。
練習しているうちに1本目がトリプルに入った場合、入らなかった場合、となりに外れちゃった場合、どのような結果でも頭で考えることなくスムーズに2本目が打てるようになります。
その流れこそがアレンジです。
数種類あるアレンジを体で覚えて、その場の状況、自分のレベル、ダーツスタイルに合わせてチョイスできるようになる。
これができて、はじめてアレンジです。
自分ならではの「乗換え案内」を作っていきましょう。

「中盤でのアレンジ」
アレンジはあがりを出すだけがアレンジではありません。
中盤にテンパイを出すのもアレンジ、上がりに向かって数字を整えていくのもアレンジです。
中盤のアレンジをするのに、覚えておくと便利な数字があります。
アレンジに強くなりたい人はぜひ覚えてください。
それは 16〜20の4カウント、5カウント、7カウント、それと4カウント+25点(Sブル)の点数を暗記することです。
19なら、4カウント=76点、5カウント=95点、7カウント=133点、4カウント+Sブル=101点
20はみなさん知ってると思うので、あとは最低でも17〜19の上記カウントは覚えておくといいです。
上級者でなくても知っていると得することが多いので覚えちゃいましょう。

これらを覚えると、どんな時に役にたつか、、、
例えば271点残り。
20に2本投げて4カウントを取ると80点、その時点数は191点です。
テンパイにはもう1本トリプルが必要です、5カウントではテンパイできません。
でも19から打った場合はどうでしょう。
19で4カウントで76点、最後S-BULLに入れれば101点取れて170残り。
5カウントで170点残りのテンパイが取れます。
271点を見て、101点とれば170点テンパイと思えるか。
それを分かっていてスローするのと、しないのとでは、決定率が全然違います。
もちろん170点にしたところで上がれる確率は低いです。
それでも、そういうことを積み重ねていかないといつまでたってもスコアは伸びません。
イメージが明確になればなるほど、決定率はあがります。

259、262、265点残りも同様です。
20で5カウント(100点)出してもノーテンです。
簡単にいうと20シングルに2本入れた段階でノーテン確定します。
ところがこの3つの数字、19で5カウントならテンパイです。
たとえ19シングルに2本入れても、3本目まで可能性が残ります。
3本同じところに投げられて、しかも1本でもトリプルに入れればOK。
そう思って狙えば成功率もあがり、テンパイが出しやすいです。
可能性が広がります。

PDCプレイヤーの多くが265点残りを19からいきます。
5カウント以上でのテンパイ狙いです。

ここでアレンジ上級者が350点を切ったあたりから意識しているアレンジのコツをちょっと書いておきます。
それは残り点の下一桁を0、1、4、7のどれかにしておくというものです。
あえて解説はしません。
なんで?と思った方、研究してみてください。

中盤でのアレンジのコツを書きましたが、
そんなこと気にしてしまうとシュート力が下がる!っていう人もいると思います。
とりあえず試してみて、あまり成果が出ないようなら、アレンジ気にせずに「ひたすら削ることに専念」でいいと思います。
残り点が偶数なら20狙い、奇数なら19狙い。
このように決めて打つのも立派なアレンジです。
それでいいと思います。

「自分なりのカタチをつくる」
アレンジはいつも手堅い選択をするだけがベストとは限りません。
固執しすぎない事も大切。
時には、思い切りよくリスクのある選択をした方がよい局面もあると思います。
あまり頭を固くすることなく、セオリーだけでアレンジを選択するのでなく、ゲーム全体を考えて勝負どころでは、思い切ったアレンジをする事も、ときには必要なことかもしれません。
だからこそ、多くの引き出し、パターンを知っている事が、試合の流れを有利に進めることに繋がると思うのです。
その場面ごとの数字だけでなく、試合全体に対しても大局観を持てるようになりたいものです。

それとアレンジを研究するとき、電卓、メモ帳も大事なんですが、かならずボードの数字配列の確認を忘れないこと。
写真でも、実際のボードでもいいです。
必ずボードを見て、そのアレンジの打ち筋をみるようにしましょう。
ボードの数字の配置がいかによくできているか痛感します。

アレンジは点ではなく線である
頭ではなく肌で知ること


この二つとても大事です。
ダブルに向けての流れを作ること。
501という数字をゼロにするために、自分にあった計画表を頭の中に描いて、残り点数によって細かい修正をしつつ、流れにのってダブルを出す。
この一連の流れがアレンジだと自分は考えてます。
・人によってアレンジは違う
・状況によってアレンジは変わる
・技術レベルによってアレンジは違う
アレンジは大事ですが数字にしばられたらつまらないです、数字は操りましょう。

「あせらず、じっくりと身につけましょう」
アレンジの習得は時間がかかります。
アレンジを覚えることはできても、それを流れとして体現できるようになるまでは、実践での経験も不可欠です。
机上の勉強で頭に覚えこませたら、あとは体にたくさん経験させましょう。
あせることはありません、少しずつ覚えて、幅を広げていけばいいと思います。
繰り返しになりますが、アレンジは何点でどこを打つということだけ覚えるのではなく、それが入った場合の次、外れた場合の次への過程が大切。
「流れを肌で覚える」ためには実践で繰り返しやっていくことです。
全体の流れが大事ということを知っているだけでも、ぜんぜん違います。
スローラインに立つ前に、1本目が入ったらどうするか、1本目が外れたらどうするか、それだけでも決めておく。
もし想定外のことが起こったら、一度スタンスを外す。
まずはそこからです。

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「おわりに」
先日PDJファイナルを観戦し、アレンジを流れとして意識している、体得している選手が少なかった印象があり、そのことをダーツ誌『NEW DARTS LIFE』に寄稿しました。
そこで書いているアレンジとは何のことを言っているのか。
その自分が持っているアレンジに対する考えを今回ブログで書かせていただきました。
7月に来日したPDC看板コーラーのラス・ブレイ氏も「日本人はアレンジができていない」と漏らしました。
これもアレンジを流れとして考えることができていないということを言っていたんだと思います。

正直、アレンジは気にしないっていう人はそれでOKです。
でも、アレンジを覚えたいという人には、こういうことを大切にしてほしいということを書きました。
アレンジを覚えなきゃダメだ、アレンジを知らなきゃダメだって話ではないです。
そしてアレンジは人によって違うし、正解がありません。
もし選んだアレンジが成功しなくても、それはあくまで結果です。
成功したら正解、失敗したら間違いってことでもありません。
投げる前にちゃんと決めている事、知っていること、イメージしていること。
そういうことが大事です、そしてそのための練習や研究をする。
それがスティールダーツの楽しさのひとつだと知ってもらえたら幸いです。

ではでは。