
ソフトダーツからスティールダーツの技術を覚えようとするとき、最初にぶつかる壁。
それが「抜く」リリースです。
裏抜きができないという人も同様です。
今回はこの「抜く」ということができない人へのアドバイスです。
リリースだけじゃなくて、ソフトとスティールのバレルの違いに関しても触れようと思います。
実はスティールを理解する上で、とっても大事なことなので知っておいてほしいです。
自分がよく口にするソフトとスティールの違い。
今回の話はその核になる内容だと思います。
読んでいただいて、必要に感じる部分はぜひ生かしていただいて、不要に感じたら部分は無視してください。
リリースの違い
スティールダーツのリリースは「抜き」です、「滑り」と表現してもいいかもしれません。
世界的にみてもトップ選手の多くは抜き系のリリースです。
もちろん抜かない、プッシュ系のリリースをする選手もいます。
「抜くリリース」
この意味、なかなかわからないですよね。
自分の店でもソフトの選手がスティールダーツの技術を身につけようという時、最初にぶつかる壁がこの「抜くリリース」です。
矢を制御しすぎないで、矢に任せる。
飛ばすというエネルギーを伝えすぎないで抜いてあげる。
簡単なイメージでいうと、ボウリングじゃなくてカーリングっていうニュアンス。

そう言っても最初はみんな抜くことができず、矢に力がすべて伝わっちゃう。
腕を振った分だけ矢速になって飛んでいく。
ソフトダーツをやってきたひとにとって、抜くリリースができないのはに当然のこと。
ソフトダーツではいかにミスなく力を伝えるか、そういうリリース技術が大切です。
でもそれはソフトダーツのバレル、ソフトダーツのゲーム性に合った飛ばし方で実のところスティールには向いていません。
なんでソフトとスティールでは飛ばし方が違うのか。
(同じでもいいんだけど、、)
自分は2つの大きな要因があると考えています。
その1つがバレル特性の違いによるものです。
バレル特性の違い
スティールバレルの特徴。
それは中が詰まっているということ、質量重視で作られています。
スティールバレルの褒め言葉は「よく飛ぶねぇ」ではなく、「よく詰まってるねぇ」です。
とくに海外メーカーはバレルの中を絶対くり抜きません。
質量が一番大切って考えているがゆえです。
バランス配分やデザインを重視してバレルの中をくり抜くということをしないのがスティールバレル。
(これは考察とかじゃなくて某有名メーカー技術者のお墨付きの事実です)
スティールメインの海外メーカーと、ソフトメインの国内メーカーが作るバレルの大きな違いがここにあります。

スティールのバレルは先端が鉄、重さもあるし、質量も高い。
楽に飛ぶし安定しています。
しかも刺さった矢には矢角がつくし、それを生かすスタッキングという技術もある。
スティールのバレルはその部分の特徴が生きるよう質量を第一に考えて作られます。
そういうバレルだとスタッキング時に弾かれることも少なく、力をたくさん伝えなくても矢が飛びます。
必然的に飛ばすスローイングよりも、方向性や再現性を考えたスローイングになります。
抜くリリースをして矢にやらせるという理屈です。
一方でソフト用のバレルは先端がプラスチック、重さも軽い、質量も低い。
なので飛ばない(仕方がないです)
だから飛ばさなきゃいけないし、ミスなくコントロールしてあげなきゃいけない。
そのため、飛ぶカタチ、リリースで力が伝わるカットなど、飛ばすことを重視したデザインや設計がされています。
そこに関しては国内メーカーのバレルはとても秀悦。
ゆえにソフトダーツ出身の人はみんな矢を飛ばす為のフォームだし、そういう立ち方、そういう投げ方、そういうリリースです。
ソフトダーツなら、それがセオリーだと思います。
でもスティールはバレルの特性、ボードへの刺さり方が違うので、結果フォームも違えば、立ち方も違う、リリースの仕方も違ってくるのは当然なことだと思います。
自分がソフトとスティールは違うという大きな理由はここにあります。
この違いを理解していないから、重いバレルを使えない人が多いのかもしれません。
重いバレルは勝手に手から離れてくれるし、よく飛びます。
だから無理に制御するんじゃなくて、やらせてあげることが大切。
無理に飛ばそうとすればするほど、力と力が喧嘩して上手に扱えない。
重いバレルって本当はとても簡単なんです。
イギリスではユース選手や女子選手の多くが重いバレルを使っています。
スティールバレルとソフトバレルの特性の違い。
ご理解いただけましたでしょうか。
質量重視 vs デザイン重視
スタッキング重視 vs 飛び重視
質量多め vs 質量少なめ
重い vs 軽い
などなど。
どちらがいいとかではありません。
道具の違いです。
この特性の違いがあり、それを生かすための技術。
ベースとなるものが違うので、投げ方などが違ってくるということです。
国内ではこのことを知らないメーカーさんがほとんどだと思います。
日本はソフトダーツの国ですから、ソフトダーツ重視で製品開発されるので当然のことでしょう。
それでも一部のメーカーでは、この特性のことを知って、スティールの研究に注力。
すでに素晴らしいプロトを製作しはじめているところも出てきています。
ソフトとスティールの違いという観点においてバレル特性の違いはとても大きな要素です。
国内メーカーさんにもぜひその事を知っていただいて、さらに良いモノ作りをしてもらえたらと思います。
グリップのなかでダーツが動く
ソフトダーツで長年鍛えた方ほど、「抜く」リリースが苦手のようです。
それは抜くということがソフトダーツだとミスに当たるからなのかもしれません。
ソフトはダーツが手から離れるまで、基本グリップとダーツの関係はそれほど変化しません。
しっかりとグリップして、リリースポイントで矢が動きだしてリリースされます。
しかしスティールダーツはテイクバックから矢を前に動かすと同時に手首が返りはじめ、そのとき手首の動きに合わせてグリップの中で矢が動きます。
グリップの中で矢が滑りだすっていう感じでしょうか。
手からバレルが離れる以前に手首を返しながらグリップの中でバレルが動きはじめます。
腕の振りだけでなく、手首の返しがあって 矢が動き始めるというのが重要。
それをスムーズに行うための動きがコッキングになります。
注意すべきは、指から離れる際にいきなり矢を抜くのではないという点。
テイクバックをしたところから、前方に動き始めるとほぼ同時にグリップの中でバレルが抜け始めます。
点ではなく線で離していく、リリースポイントではなくリリースゾーン。
グリップの中で矢が動く。
そして矢が勝手に指から離れてリリースされるという一連の動きが「抜き」です。
リリースの瞬間に抜こうとしても抜けません。
多くの人が最初は「抜き」という感覚がつかめない理由がここにあります。
リリースだけで抜こうとしてしまうためです。
指から離れる以前に、グリップの中でバレルが動く。
それが抜くというリリースにつながります。
文章で伝えるのは難しいですね。
説明動画作りましたので貼り付けておきます、ぜひご覧ください。
手首を固定して、矢にインパクトをかける人が多いソフトダーツでは、グリップの中で矢が動く、矢がすり抜けていくという感覚はなかなかわかならいことだと思います。
もちろんソフトダーツでもそうやっている人はいると思いますが、少数派でしょう。
このリリースの違いがわかっていないと、PDCプレイヤーのリリースを見ても理解することが難しいですし、本当の裏抜きや表抜きはできません。
これを理解して上手にできるようになると「抜くリリース」でもきちんと矢をコントロールできるようになります。
手首の返しは投げるためじゃなくて、矢を抜くための動作。
そう思って練習してみてください。
リリースの時にダーツを支えている指がすべて同時にすり抜けると無回転。
親指にのせて滑らせると左回転がかかります(右利きの場合)
非常に微妙な部分で文章だとわかりづらいかもしれません。
それでも何かしらのヒントにしていただけたら嬉しいです。
今回はソフトとスティールのバレル特性の違いというテーマにも触れましたが、
これはソフトとスティールの両立という話になったときに欠かせない要素です。
知っておいていただけると役に立つと思います。
最後にここまで読んだうえで見てほしい動画を貼っておきます。
リリースの瞬間に抜くんじゃなくて、グリップの中ですでに抜けはじめてる。
それがわかりやすい動画だと思います。
ではでは。